Artist's commentary
1423
日深戦争終結から70年・・・かつての大戦を知る者も減り、英雄達の名も時の移ろいで色褪せた今、一つの命が燃え尽きようとしていた・・・
「この70年・・・仲間達も、敵も・・・皆先に逝き、無能故にワシは長く生き続けてしまった・・・そんなワシにはもはや見送る者も居るはずがないな・・・」
己の最期を悟っていたであろう老人は、誰かと話す訳でもなく、すすり泣く様に弱々しく静寂の中で呟いていた。
「・・・お前も、独りで逝った時は・・・さぞ寂しく辛かっただろうな・・・すまなかった・・・・・・」
老人は、ひどく悲しげな表情を浮かべたままゆっくりと目を瞑り、深い眠りにつくような感覚に身を任せて暗闇へ意識を融かしはじめた。
―独りじゃありませんよ?―
懐かしく、優しい声に意識と引き止められた老人は、驚いた風に再び目を開ける。
「やま・・・と・・・・?」
そこには、あの時のままの大和の姿あった。
―私も提督も独りじゃありません。いつでも貴方は私の側に居てくれて、私はいつでも貴方の側にいたのだから。あなたを未来へ送り届けるため、日本の新生の為、その先駆けとなって散れて大和は満足です―
そう、老人に語りかける大和は今際の際に彼が見ている幻影か、沈んだ意識が見せる死者の夢なのかもしれない。しかし、老人にとってそんな事はもはやどうでもよかった。
「お前を・・・死地に向かわせた挙げ句・・・自らは70年も生き恥を晒し続けた・・・こんな・・・情けないワシの側に・・・ずっと・・・ずっと居てくれたのか?」
やせ細った冷たい手を彼女に向けて精一杯伸ばす老人。その手に彼女はそっと手を添えた。
―大和は、これからもずっと貴方だけの艦(ふね)ですから。―
込み上げてくる熱いものを抑えきれず、止めどなく涙を流す老人。
大和は彼を見つめながら穏やかに微笑む。
―さぁ、提督。作戦の指揮を―
寂しさや悲しさの全てから解放された老人は、もはや暗闇に融ける事無く、かつて彼女と共に行くべきだった場所を見つめていた。
「1423・・・。現・・・時刻をもって・・・・進撃を・・・開始する。・・・征こう・・・・・俺たちの―」
―海へ・・・―
※差分は不透明度0%バージョンです。
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